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わたしはショートケーキが嫌い
第1章 インターホンを鳴らしたのは、
食後にショートケーキが出た。
可愛い花柄のお皿に乗せてママが出してきた。
甘ったるそうな生クリームの上には酸っぱそうな苺がボトりと置かれている。
「パパがケーキ屋さんで買ってきてくれたのよ」
うん。知ってる。
「美咲、ショートケーキ好きでしょ?」
ううん。嫌い。
「さ、食べなさい」
食べたくなかった。
満腹だからとか、そういうのじゃなくてただ単に私はショートケーキが嫌いだから食べたくなかった。
けど、
「食べなさい」
私はショートケーキを食べるしかない。
ショートケーキにフォークを軽く当て、力を入れて押しす。
フワンとした感触がフォーク越しに伝わる。
それだけで口の中が生クリームの味でいっぱいになる気がした。
舌に絡み付いてネチョネチョになった生クリームとスポンジの味がする気がした。
「パパがお風呂出たら美咲も入りなさいね」
「‥‥うん」
お風呂場からはシャワーの音と水が跳ねている音が聞こえてくる。
私はフォークの上に乗せたショートケーキのカケラを口に入れようとした。
ネチョネチョになった生クリームとスポンジの味が気持ち悪いから嫌い。
ネチョネチョになって、クチュクチュになる嫌なスイーツ。
目を閉じて食べようとした時、インターホンが鳴った。