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わたしはショートケーキが嫌い
第5章 はじめての宗教
「愛されたいって、贅沢なお願いなのかな?」
美咲ちゃんの頭を撫でながら僕は目尻が熱くなるのを感じていた。
ただ愛されたい。それだけだった。
僕も、君も。
「僕は愛してたよ。愛してた。すごく愛してたけど、愛してもらえなかった」
ポロッと、涙が片目から溢れた。
「母さんは僕を愛してくれなかった」
ポロポロ涙が雨のように溢れて止まらない。
「けど、あの子のことも愛してあげなかった」
あなたは可愛い私の娘
くりくりおめめが可愛いね
あなたは私の可愛い娘
そうやって母さんは歌いながらあの子の頭を撫でていた。
「愛されたかったけど、あの子が愛されてるならそれでよかった。僕はあの子のことも母さんと同じくらい愛してたから。だからあの子が幸せならそれでよかった。けど、母さんはあの子のことも愛してなかったんだ。僕も、あの子も、愛されてなかったんだ」
クレヨンで描かれた僕の似顔絵。
ピースが足りない50ピースのパズル。
ヘンゼルとグレーテルの絵本。
走馬灯のように思い出の物が脳みそに浮かんで消えた。
まるでシャボン玉がパチンと割れるみたいに消えた。
「‥‥‥幸せになるって、難しいね」
心底そう思った。
幸せになるって、こんなにも難しい。
美咲ちゃんは顔を上げて僕の顔を見た。
僕と目が合った美咲ちゃんの目は赤くなっていた。
赤くてうさぎみたい。