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わたしはショートケーキが嫌い
第1章 インターホンを鳴らしたのは、
ママがそう忠告した瞬間、男の目つきが変わった。
真黒な目玉がさらにテラテラ光り、化け猫のように口角を釣り上げニィっと笑う男。
『警察呼べるのかなぁ?』
「よ、呼ぶわよ本当に」
『呼んだらバレんじゃなーいの?』
「なにもバレてまずいことなんて‥‥」
『“ない”なんて言わせないよ?クソ婆ぁああ』
ピッ、とボタンを押し画面を暗転させたママは恐怖と言うより不安な顔をしていた。
手を胸に当て、少し呼吸を乱しながら横目で私を見る。
するとまたピンポーンとインターホンが鳴った。
ママはインターホンの画面を見なかった。
「誰なのあいつ‥‥‥」
ひとりごとを言うママ。
すると今度はインターホンではなく玄関のドアが激しい音を鳴らした。
ドンドン!ドンッ!
その音は間違いなく玄関のドアを叩いたり蹴ったりしている音だった。
ドンドンドンドン!ドンッ!ドンドンドンドン!
鳴り止まない音にママは耳を塞ぐ。