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わたしはショートケーキが嫌い
第8章 他人事
「なにボーッとしてんだ?」
ポフっ、と頭をノートで軽く叩かれた。
この声は恭平の声だ。
ちょっと緊張したように震えてる声。
いつから恭平はこんな声になったんだ?
前はもっと堂々とした、口の悪い奴だったのに。
今は何かに怯えてるみたいに感じる。
本人は平常心を装っているつもりらしいけど、下手くそだな本当に。
「ノート写し終わった?」
だから付き合ってあげる。
恭平の下手くそな演技に。
なんとなく分かっている。
恭平の様子がおかしい理由は。
けど恭平が“それ”を俺に言わないから俺も知らないふりをして、演技に付き合ってあげる。
「‥‥なぁ」
「なに?」
「長谷部は‥‥無事かな?」
「‥‥無事じゃないかな?」
恭平、お前は本当にわかりやすいよ。