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いとかなし
第10章 いろみえで うつろうものは よのなかの
指はどんなに擦り付けても、奥まで届かない。

「指…指、じゃ…ぃやあっ…」

「ふふっ、じゃあ何が欲しい?」

指の動きはそのままに、糸だけが目を見開く。

「言わないと」

無邪気に笑顔を浮かべて、糸の言葉を引きずり出す。

「ほら」

埋めた指が激しく抽送されると、糸の身体は指よりも太くこの疼きを治めてくれるものを求めて揺れ始める。

「け…し、さ…の…」

「ん?」

糸はくっと下唇を噛んで覚悟を決める。

「こ、れ…ほし…ぃっ…」

啓司のそそり勃つ獰猛な肉幹に手を伸ばす。

「これ?」

「…っ…啓司さ…」

糸の目が潤み始めると、啓司は鼻先にキスをした。

「ごめん、虐めすぎた」

ゴムの端を口で切り被せると、糸と目を合わせた。
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