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いとかなし
第11章 きみにこい いたもすべな
絶品のだし巻き卵に舌鼓をうつ。

「白味噌も美味しいですね」

「うん」

「でも、啓司さんのご飯がやっぱり一番」

満面の笑顔を浮かべる糸に、啓司の頬も自然と綻んだ。

豪奢なホテルを後にして、周辺をドライブしながらゆっくり帰宅した。


✳︎✳︎✳︎



楽しかった時間はあっという間で、またいつもの毎日がやってくる。

啓司の作ったお弁当を持ち、会社へ向かう電車に乗った。

流れていく見慣れた景色が、週末の旅行を遠いものに変えていく。

「おはよう」

会社の最寄駅で降りると、改札を出たところで綾時に声を掛けられた。

「おはようございます」

「どこか行ったのか?」

目敏く糸が下げているお土産の紙袋をみつける。
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