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いとかなし
第12章 まちいでても いかにながめん わするなと
終電が近くなると連れ立って帰っていく人を見送った。

「ちいちゃんは俺が送るの!」

嫌がる千津子の後を追うように、恒平はぴったりくっ付いて帰っていく。

お皿は重なっていたし、グラスもかたまって置いてあり、手際よく片付けが終わる。

「さて、と」

濡れた手を拭き、糸の方に向き直る。

「え?」

「はい、バンザーイ」

糸は何事かと、それでも啓司の掛け声に合わせて肘からだけで万歳をする。

啓司は部屋着のTシャツの裾を掴んで引き抜いた。

「きゃあっ!啓司さっ…」

屈んだかと思うと次の瞬間、糸の腿から抱き上げた。

「お風呂入ろう」

意気揚々とお風呂へと向かう啓司に、下ろしてと何度も訴えたけれど、暴れると危ないと言われ大人しくするしかなかった。
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