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いとかなし
第13章 こいすちょう わがなはまだき たちにけり
顔を上げると糸は思っていた反応と違ったのか、みるみる顔を赤くした。

「笑うところです!」

くるっと背中を向けた糸の腕を掴んで引き留めると、代わりに小さな箱が横倒しに落ちた。

「あっ…」

糸が落ちた箱を見つめる。

「糸にする、糸が先」

顎を掴んで振り向かせると唇を奪う。

「んふっ…ンッ…」

腰に手を回されがっちりと抱き留められる。

「んっ…んっ…ぁふ…ぅ、ンッ…」

僅かな隙間から割り込んできた啓司の舌が、口腔を嬲り尽くす。

糸も必死に舌を絡めて、玄関先という扇情的なシチュエーションに煽られていた。

「ごちそうさま」

ペロリと唇を舐められて、やっと解放された。

フラフラになりながらキッチンに戻り、ビーフストロガノフを並べた。

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