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いとかなし
第14章 おもいねに わがこころから
「啓司でしょ?どうぞ?」

手帳型のスマホカバーを開くとそこに表示されていたのは賢都だった。

「すいません、会社からなので失礼します」

「構わないわよ、ここでどうぞ?」

にっこり笑って深月はエスプレッソのカップに手を伸ばした。

「もしもし」

『休みにすみません、綾時さんが捕まらなくて…M社の去年のデータのファイルってどこにあるか知ってますか?』

「休日出勤してるの?多分机の真後ろにあるキャビネットの下から二番目だったと思うけど」

ガタガタと移動してドアを開ける音が聞こえる。

『あ、ありました、すいません電話して』

「大丈夫、お疲れ様」

『糸さんの声聞いたらやる気出ました!頑張ります、じゃあ失礼します』

電話が切れると、糸はまたテーブルに戻した。
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