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いとかなし
第14章 おもいねに わがこころから
食事もふやかしたドッグフードを食べ、量が減り、回数が減り、確かにその日は近づいていた。

「ふゆ、行ってきます」

すっかり眠る時間の増えたふゆは、糸の声に目を閉じたまま尻尾だけを二、三度振った。

「いってらっしゃい」

午前中いっぱい事務仕事を家でこなすようになった啓司とよるが糸を見送る。

後ろ髪を引かれる思いで会社へ向かうけれど、デスクに置いたスマホが気になってしまう。

今日かもしれない。

ここ数日はその考えを振り払うことが出来なくなっていた。

「糸さん、明後日のプレゼンの資料、チェックお願いします」

賢都に渡された資料に目を通す。

「…大丈夫ですか?」

え?と顔を上げた糸は賢都の心配そうな瞳に、ふゆの事を聞いてもらうと少しだけ気持ちが落ち着いた。
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