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いとかなし
第16章 あをまつと きみがぬれけん
自分の部屋へ入ると、布団を引き倒れこむようにうつ伏せになった。

「ふゆもいない…よるだけだね…」

よるは糸よりも先に布団へ潜り込んだ。

「よる…寂しい?」

よるは片目だけを開けて直ぐ閉じた。

「私…ここに居ちゃいけないよね…」

糸はパジャマの上にカーディガンを羽織り、スマホを手にする。

音を立てないように引き戸を開け、静かに飛び石を越えていく。

どこへ行けばいいのかわからないけれど、あの家にいる資格がない。

千津子の番号を探して表示したまではいいけれど、1時を回っていて流石に電話するのは気が引けた。

小さな公園のベンチにスマホを握って座り続ける。

ふと浮かぶのは啓司の笑顔で…それを振り払う様に頭を振った。

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