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いとかなし
第17章 まよいそめし ちぎりおもうが
定時で終わって会社を出ると、千津子に呼び止められた。

「糸、何かあったでしょ?いい加減話しなさいよ」

渋る糸を引きずるようにカフェまで連れて行った。

「…打ち上げの日…賢都くんに告白されて…」

「あいつ頑張ったんだ」

「ちいちゃん、知ってたの?」

まあねとコーヒーを口にする。

「私はてっきりちいちゃんが好きなんだって…思ってた…」

肩をすくめる千津子を前に糸の表情は沈んでいく。

「その…キスもされて…嫌いだって、顔も見たくないって振って欲しいって…凄く真剣だった…」

千津子は口に出さずに、賢都のやり方を策士だと思っていた。

嫌いと言えと言われて、嫌いだと言える糸ではない。
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