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いとかなし
第3章 昔はものを 思はざりけり
シンクに並んで手分けして食器を洗い、掃除も手分けして済ませた。

ただ。

「俺もパンツとか干してもらうの恥ずかしいんだけど」

洗濯だけは糸は頑として譲らず、纏めて糸が干すことで話がつく。

一通りの家事が終わった後啓司からその話が持ち出された。

「カードの支払いの件、振込先教えて?」

26歳のただのOLの糸にとって78万円は大金だ。

けれど、コツコツ貯めてきた貯金を当てれば払えなくはない。

「リボ払いで金利払うより月々の家賃として無利子で俺に返した方が良いよ、ついでに家事も手伝ってくれるならそれも差し引くから」

でもだってと渋る糸に、啓司は些か強引にお金を振り込んだ。

「はい、これで俺の言うことを聞くように」

にっとイタズラな笑みを浮かべた啓司に、糸は困惑しながらも頭を下げた。
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