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いとかなし
第3章 昔はものを 思はざりけり
目にかかるほどの長めの前髪から覗く瞳はぱっちりしていて、ミルクティーの様にブリーチされたアシンメトリーなショートボブがよく似合っている。

チラッと糸を一瞥して、手に提げていたビニール袋を啓司に突き出した。

「おっ筍じゃん、大森のおじいちゃんから?」

こくんと無言で頷くだけ。

「糸ちゃん、こちらご近所さんの池松 眞紘(いけまつ まひろ)、眞紘、こちらうちに住む事になった鴻上 糸ちゃん、これから宜しくな」

「宜しくお願いします…」

眞紘の視線は鋭いままで、糸は萎縮した。

「筍ごはんにしようかな、小さい方は今夜焼き筍もいいか」

眞紘の事など全く気にすることなく啓司はビニール袋を覗いて思案している。

踵を返した眞紘は、啓司のお礼に手だけ振って応えて帰っていった。
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