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いとかなし
第3章 昔はものを 思はざりけり
糸を先に見送った啓司が掃除もして出るのが容易く想像出来た。

二言目には「俺がしてあげたいの」で済ませてしまう啓司。

美味しいお弁当を綺麗に平らげて、午後の仕事に打ち込んだ。

定時に上がって家路を辿れば7時前には家に着いた。

「ただいま」

「おかえりー」

鼻腔をくすぐる香ばしい香りにお腹は正直だ。

食卓には待ち構えていたかの様に湯気を立てる青椒肉絲。

「美味しい〜お弁当もすごく美味しかったです」

「糸ちゃん、本当に美味しそうに食べてくれるから嬉しいよ」

夕食を終えると啓司は再び仕事に戻る。

午前中は会社で事務仕事をし、午後は病院、夜は実業団やプロチームに施術の為に出向く事が多かった。

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