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いとかなし
第3章 昔はものを 思はざりけり
さらの顎を擽りながら、啓司は語りだす。
「ライバルで凄い奴が居てさ、負けたくなくて…隠れて練習したんだ、そしたら…まぁやり過ぎてね」
啓司は左肘の内側に残る手術跡を見せた。
「草野球程度はできるけど、その頃は甲子園やその先のプロも当たり前だと思ってたからね、情けないけど自暴自棄になって…そんな時にコーチに理学療法士として携わる事を教えてもらったんだ、で今に至る」
簡単に言ってのけるけれど、そこまで期待されていて自業自得とはいえどう気持ちを整理したのか、想像し難い。
それでも、今目の前の啓司は笑っている。
「糸ちゃんには酷だけど、糸ちゃんが振られてよかった」
「え?」
「最低な男が捨ててくれたおかげで、糸ちゃんを拾う事ができた、俺は感謝してる、こんな可愛い女の子を捨てる馬鹿な奴で本当ありがたいよ」
啓司の言葉がストレートに糸の心に沁みていく。
「俺のところに来てくれてありがとう」
にっこり笑った啓司に糸は胸が締め付けられていた。
「ライバルで凄い奴が居てさ、負けたくなくて…隠れて練習したんだ、そしたら…まぁやり過ぎてね」
啓司は左肘の内側に残る手術跡を見せた。
「草野球程度はできるけど、その頃は甲子園やその先のプロも当たり前だと思ってたからね、情けないけど自暴自棄になって…そんな時にコーチに理学療法士として携わる事を教えてもらったんだ、で今に至る」
簡単に言ってのけるけれど、そこまで期待されていて自業自得とはいえどう気持ちを整理したのか、想像し難い。
それでも、今目の前の啓司は笑っている。
「糸ちゃんには酷だけど、糸ちゃんが振られてよかった」
「え?」
「最低な男が捨ててくれたおかげで、糸ちゃんを拾う事ができた、俺は感謝してる、こんな可愛い女の子を捨てる馬鹿な奴で本当ありがたいよ」
啓司の言葉がストレートに糸の心に沁みていく。
「俺のところに来てくれてありがとう」
にっこり笑った啓司に糸は胸が締め付けられていた。