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いとかなし
第4章 しのぶれど 色に出にけり
はやる気持ちを抑えて玄関で靴を脱ぐ。

縁側沿いの部屋に入るとその人はよるを抱いて眠っている。

「眞紘さん…」

ミルクティーカラーの前髪がさらりと流れて、今日はマスクもなく綺麗な寝顔を惜しげもなく披露している。

よるの方が先に目を開けて、眞紘を乗り越えて出て行く。

「ぐえっ、よる!」

脇腹を踏まれた眞紘がぱっちりと目を開けた。

「あー…洗濯物、雨降ってきたからしまっといた…」

「ありがとうございます…」

「…勝手に触るなとかって怒らないんだ?」

「そんな…」

受け答えをしながら、違和感を感じる。

眞紘の…声。

透き通るような白くきめ細かい肌に、赤い唇、ばさばさの睫毛に縁取られた黒目がちな瞳。

意外なハスキーボイスがその魅力を倍増させているようだ。


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