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いとかなし
第4章 しのぶれど 色に出にけり
「甘利さ「眞紘、手ぇだすなって言ったよな?!」

ふふっと妖艶な笑みを浮かべる眞紘に詰め寄る啓司。

「あ、あの、埃を取って貰っただけで…」

啓司に背中を向けていた糸と、啓司が帰ってきたのが端に見えていて、作為的に近づいた眞紘。

糸の言い訳などまるで聞こえていない。

「さ、かーえろっと、糸、またね」

「あ、はい…」

「糸…って、呼び捨てすんな!!」

沓脱ぎ石に置いたままだったサンダルを引っ掛けて帰ってしまう。

妙な沈黙にどうしていいかわからない。

「眞紘…悪い奴じゃないんだ、寧ろ誤解されやすいけど、すげえいい奴で…でも、その、手が早い…じゃないな、からかってるというか…なんか俺、眞紘の事悪く言ってない?」
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