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いとかなし
第4章 しのぶれど 色に出にけり
啓司は糸の目の前に小指を差し出した。

「約束ね」

無邪気に指を絡める啓司に糸はくすりと笑った。

「はい」

「約束げんまん、嘘ついたらー…どうしようかな?」

真剣に破った見返りを考えている啓司。

「じゃあ日曜日までに考えておいてくださいね」

「何でもいいの?」

目がきらきらしている啓司に、糸は失言だったのかと首を竦めた。

「そらっ!!糸ちゃんに何してもらおう?」

「甘利さん!約束を破ったら、でしょ?」

「他の奴を応援したらだからね」

年を押すようにして、そらも承認とばかりに顔を向けてくる。

半ば呆れながらも、やっぱりその顔が…。

湧き上がってくる気持ちを抑えたくとも、さっき抱きしめられた匂いや腕の力強さや、胸の厚みに頬が熱くなる。
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