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いとかなし
第5章 みをつくしてや   恋ひわたるべき
糸の複雑な表情を恒平はさもおかしげに笑っている。

「恒平!!」

血相を変えて飛んでくる啓司。

「何してんの?」

「なーんにもー?あ、水鉄砲マッチ始めんの?」

啓司の手には水鉄砲が握られていた。

恒平はそれを分捕ると嫌がる千津子を強引に引き剥がして、水鉄砲マッチに参戦した。

子供達の歓声に混じって大人の奇声が響く。

「行かない?」

「…しぐれがいるから…」

「…恒平に何言われたの?」

「…っ、な、にも…」

「隠すのが下手だね」

椅子がきしむと糸はすうっと息を吸って意を決した。

「歩と…何で会ったんですか?」

「…ごめん、勝手して」

しゅんとなる啓司に、糸は慌てて怒ってないと否定した。
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