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いとかなし
第5章 みをつくしてや   恋ひわたるべき
しぐれが何かを察知して糸の腕を擦り抜けた。

「嫌いになんて…」

「じゃあす…っ冷てーっ!!」

頭からバケツの水をぶっかけられて、啓司は飛び上がった。

「てめーは何堂々とナンパしてんだよ!さっさと焼き場に来い!!」

びしょびしょの髪を振って水をきりながら、首根っこを掴まれてバーベキューの焼き場へと連行されていく。

”じゃあす…”

その言葉をきっと続けられる。

「好きです」

糸は見送りながら、そっと呟いた。


✳︎✳︎✳︎


日が傾き始めると、テキパキと片付けが終わり、各々散っていく。

「お先〜」

真千子が運転する恒平の車に千津子もその他も乗っていた。

例外にもれず啓司の車にも三人が便乗したけれど、糸が後部座席に座る事は断固拒否した。

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