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いとかなし
第7章 ひとしれず おもえばくるし
はれはゴロゴロと喉を鳴らした。

「糸、この手のひらを返したはれに、今までの悪態を許すわけ?」

「悪態だなんて…居なくなる前に打ち解けてくれて嬉しいです」

糸の優しさと人の良さに啓司はため息をつく。

はれは狙ってやっているのに、この様子だと猫に限らず他の男にも警戒心が薄そうで啓司は二度目の深いため息を吐いた。


✳︎✳︎✳︎


日にちをずらして4匹はそれぞれの新しい家族の元へ巣立っていった。

しぐれが部屋の中を逃げ回るのを見た時は糸も切なくて、手放せなくなりそうなのをぐっとこらえた。

「…静かだな」

おじいちゃんのふゆと、すっかり大人のよるはもう其々の定位置で寛いでいる。

二人きりの夕食、いつもと変わらない筈なのに何故かそう感じていた。
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