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いとかなし
第8章 いろならば いづれかいかに
「糸…此処じゃなくて…ベット行こっか?」

鼻先がくっつきそうな距離で、視線は交わったままで。

同じ気持ちなんだということが嬉しくて、それ以上に恥ずかしくて、ただ頷いた。

「行く前にキスしよ」

起こした身体を少しだけ捻るようにしてキスをする。

ちゅっ…と静かな空間にリップ音がやけに響く。

一つ、また一つ。

終わりの見えないキス。

「ね…も、いい…?」

「だめ、もう一回」

「で、もっ…ンッ…」

「逃げるならしないよ?」

啓司の右手は糸の後頭部に回っていて、糸の身体もいつの間にか前のめりになっていた。

子供の様な、ただ唇が重なるだけのキスに気持ちが煽られる。

その先にある事をもう知っているから、気持ちが身体を急かしていた。
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