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kiss
第10章 hand
昼休みになり喫煙所で煙を味わっていると、ガラスの向こうから美浦が歩いてきた。
窓際に俺を手招き、二人で並ぶ。
「洋ちゃん。火、貸して」
「またですか……」
俺は慣れた手つきでライターを差し出す。
灯った火に美浦が煙草をくわえて近づき、器用に火を貰う。
この光景も何度目か。
ふーっと息を吐いた美浦が物思いに耽るように目を細めた。
切れ長の一重に細い眉。
和風イケメン、とでも言うか。
微妙な奥二重の自分には羨ましい容姿だ。
「昨晩はさ……珍しく隼が起きて待っててくれてたんだよね。布団敷いてさ」
「色気ある話ですね」
対象が小学生男子じゃなければな。
美浦はうっとりと景色を見下ろして続ける。
「どうしたのって訊いたら、怖い夢見たみたいでさ……僕の携帯番号教えておいたはずなのに、一人で耐えてたんだ。仕事の邪魔しちゃいけないでしょって、震え声で」
「健気ですねえ」
「本っ当に可愛くってさあ。だから昨日は遅くに悪かったんだけど、日付越えてからまだお風呂に入ってなかった隼とシャワー浴びて、そのままタイルの上で」
「美浦さん。プレイ内容まで遠慮します」
「あそう?」
俺の部屋と壁一枚の風呂場で激しくヤれば全部聞こえるっつの。
煙草を噛んでしまい、灰皿に潰す。
「隼くんとはいつ出逢ったんでしたっけ? そろそろ半年記念じゃないですか」
「そうなんだよ。今日で半年」
「電車で痴漢に遭ってるのを助けたんですよね」
そのあと公衆トイレであんた自身がヤったらしいがな。
「あの時のハヤは天使みたいだった……まだ精通もしていない未熟な体を弄ばれて、涙を目に一杯溜めて必死に堪えててさあ。あんな目で見られたら、我慢なんか出来なくなって当たり前だよ。出来たら痴漢にぐちゃぐちゃにされた後をハヤに掻き出させて処理を手ほどき」
「昼休み終わりますよ」
四本目を灰皿に落として、俺は冷たく言い残し出ていった。
振り返って見た美浦の背中から漂う幸福オーラにやけにイライラした。
あれだけの容姿をもて余してガキに夢中なんて良いご身分だ。
そこではたりと止まる。
そして痛む頭を振った。
違う違う。
別にそんなことは思ってない。
俺はあの人を上司として尊敬してる。