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kiss
第10章 hand
 百貨店の大きな袋を提げながらアパートにつく。
「奢りって一般的には弁当を指さないと思うんですけど」
「食べ行ったらハヤに悪いし」
 カンカン、と二人ぶんの足音が追っかけっこ。
 鍵を取り出そうと美浦がポケットを探ろうとしたとき、大きな音を立てて扉が開いた。
 二人とも固まってしまった。
 隼がエプロン姿で、顔を真っ赤にして泣きじゃくっていたからだ。
「……ハヤ?」
 すぐに美浦が駆け寄って抱き締める。
 俺はそんな美浦が落とした荷物を拾って後に続いた。
「っうぅ……え……っ」
「どしたの、ハヤ。何があったの」
 顔を起こさせ、隼の涙を拭う。
 その一つ一つが優しい。
 本気で大事にしているんだろう。
 っふ……
 なんだそれ。
「あのね……直彦にね、おれ……うっ、ば……ばん、ばん」
「ウバンバン? なにそれ妖怪?」
「晩餐をぉ、作ってあげたかったのぉっ……なのにぃ、うええ」
「わかった。晩餐ね晩餐」
 そう言って今にも泣き声を爆発させそうな隼を急いで抱き寄せ、撫でる。
 しかし……晩餐て。
 そういう言葉が好きなんだよな。
 子どもって。
 ちょっと難しいの覚えるとすぐ。
 それにしても、可愛い。
 美浦がのめり込むのもわかる気がする自分が怖い。
「何作ってくれたの?」
「……けぇき」
 ダメだ、笑っちゃ。
 なんでデザートだよとか笑っちゃダメだ、俺。
 口を押さえる俺を隼が不審そうに見上げる。
「そっかあ。ケーキか。凄いなあ、ハヤは。とりあえず中に入ろう。早くハヤのケーキが食べたい。あと僕疲れてるからぎゅってして」
「ぎゅ!」
 泣いていたのもどこへやら。
「ああ……癒し」
 小学生に背中を擦られ、その胸元に甘える上司を見る部下の気分だよ。
 どうすりゃいいんだ。
「洋ちゃんもぎゅっする?」
「されな、されな」
 隼を此方に促す美浦。
 俺は荷物を置いて屈んだ。
「お願い」
「ぎゅ~!」
 あ、やばい。
 これは何かが擽られる。
 小さな手が俺を頑張って抱き締めようとしてる。
 隼の首から甘い香りもする。
「ハヤ、僕の時より長くない?」
 美浦の不満そうな声にハッとして、俺は隼を引き剥がした。
「洋ちゃんも疲れてる?」
「んーん。隼くんに癒されたよ」
「でしょ! おれのぎゅっは凄いんだ」
 本当に……
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