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kiss
第10章 hand
河川敷の一角。
俺はさびれたバスケットゴールを見上げ、それから見せつけあうようにいちゃつく二人を一瞥する。
「昨晩は楽しかったですか」
「うん。最高」
「直彦もいっぱい出したもんねっ」
「もぉ~、そういうこと外で言わない」
頭を押さえる。
落ち着け……落ち着け、俺。
この男は上司であってそこらの変態ではないから軽蔑してはならない。
「ハヤったらお風呂で寝ちゃったんだよ。僕に体洗わせてさ」
「だって直彦の手気持ちいいし」
「背中流すって言ってたのに……」
「おれから洗うって直彦が言ったんじゃんか!」
「やるんすか! やらないんすか! バスケット!」
「やるよっ」
怒鳴った俺に二人がハモる。
熱い。
秋なのに暑苦しい。
修造が帰国したのか。
そうだ、帰国したんだったな。
ポンとパスしたボールを取り損ねてハヤが走って追いかける。
「ね。なかなか音痴だろ」
「これは美浦さん、大変ですね」
「まあ教えるのは好きだけど問題は」
「直彦パース!」
その言葉とは裏腹にあさっての方角へ飛んでいったボールを二人で見送る。
それからやれやれと美浦が追いかけに走った。
戻ってきた時には少し息が切れていた。
「僕一応アラサーだからさ、体力……」
「まだ二十六じゃないすか」
「洋ちゃんパース」
パシッと軽々と受けとめ、またハヤに投げる。
「あー!」
追いかける。
その繰り返し。
「あのゴールに届くのはいつになるか」
「洋ちゃーん」
「はいはい」
顔面に飛んできたボールを片手で弾き落とす。
感心したように投げた張本人が拍手をする。
「洋ちゃんひょっとしてバスケ部?」
「体育でやった程度ですよ」
「すごいねー」
「すごいねー」
二人が顔を見合わせて言う。
端から見たら親子にしか見えない。
全く悪い冗談だ。
ドリブルに苦戦するハヤを眺めながら煙草を吸う。
隣で美浦が携帯片手にハヤを連写していた。
「ブレません?」
「ん。何枚かは大丈夫」
「隼くんってあのダンサーのタヤの弟って言ってましたよね」
「んー? あ、そうそう。兄弟二人暮らしでね。ほとんど帰らないから僕の家にいるんだけど」
「運動神経、ぜんぶ兄に持ってかれたんですかね」
「感謝するよ。音痴は可愛い」
親バカ。
あ、いや。
バカップルか。