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kiss
第11章 neck
 店から出て、快晴の空に伸びをする。
「お腹いっぱいだしいい天気~。幸せよねえ」
 会計を済ませた飯塚が出てきて、陽光の眩しさに目を細める。
「ごちそうさま」
「いえ。誘ったのはこちらですから」
 真面目ね。
 ふふ、と笑って寄り添う。
 ブーツのヒールがコツコツ響く。
「貴方は、本当に女性のようですね」
 さらりとした髪に手を伸ばしかけて下ろす。
 触ってもいいのよ。
 でも敢えて言ってあげない。
「顔も小さくて、肩も……」
「逆にそちらは男らしいわよね。筋肉もついてて、がっしりして」
 なにかしら。
 この褒め合い。
 なんかおかしい。
 手を口元に当ててくすくす笑う。
 飯塚もつられて微笑んだ。
「このあとどちらへ?」
「仕事場。新宿行かなきゃ」
「駅まで一緒しましょう」
「ええ」
 二人で並んで歩く。
 身長差は十センチくらい。
 背広と、派手な私服。
 どうかしら。
 どう見えるのかしら。
 じっと飯塚を見上げる。
 まっすぐ前を見ていた瞳が此方を向く。
 それから優しく歪んだ。
 眼で笑う人。
 きっと、この人は素敵な旦那になるのだろう。
 ぼんやりと悟った。
 可愛い奥さんと、天使みたいな子供に囲まれて、今の眼をする。
 素敵じゃない?
 でもなんだか……なにかしら。
 虚しさを感じた。
 幸せで温かい家庭。
 随分長いこと想像もしてなかった。
 毎晩のように青年を抱き、抱かれて。
 バーで男の相手をして。
 日々の関心ごとは美容と性。
 将来、か。
 家族、か。
「どうしました?」
「……アタシってなんなのかしらね」
「え?」
「ふとね、考えちゃったの。貴方はきっと幸せな家庭を築く。きっと。家族を守るために働いてー、週末は家族と過ごしてー、老いたら息子と酒を飲み交わして……娘の結婚式に涙するわ。ヴァージンロードを歩きながら、ドラマみたいに」
 飯塚は黙って聞いていた。
 変ね。
 変よね、アタシ。
 一人でぺらぺら。
「孫が出来たらいいおじいちゃんになって、沢山小遣いもあげるの。たまには預かって遊びに行くわ。自分のことじーじとか言って、色んなとこに連れて行ってあげる。奥さんとは……」
 足が遅くなる。
「奥さんとは……」
 あら。
 妄想が止まる。
 一緒に足も。
 奥さん?
 この人の?
 駄目ね。
 どうして浮かばないのかしら。
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