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kiss
第12章 eye
「兄ちゃんなんでジャンプ買わなくなったわけ?」
「お前読んでも戻さねえから」
「えーっ。新連載好きだったのに」
 ポンと冊子を投げられる。
 キャッチすると今週号だった。
「自分で買え」
「やだ」
「お前な」
「やだ」
 棚に戻して表紙を撫でる。
 展開ついていけなくなってんだろうな。
 勿体ねえ。
「傘五百円とか狂ってる……」
「いや、こんなもんでしょ」
「オレいらない……お前買ってこい」
「一つでいいの」
「おう」
 レジの列の最後尾に並ぶ。
 パンの山に手を伸ばしたくなる。
「あ、肉まん出てる」
「買う?」
「オレあんまん」
「じゃ、俺は特製肉まん」
「出口で待ってるから」
 チャリン、と二百円渡される。
 あんまん代か。
「りょー」
 会計をしつつチラと外を見ると、自販機にもたれて兄ちゃんは灰色の空をじっと見上げていた。
 制服は真っ黒に染まり、襟から見えるシャツの小さな白さが目立っていた。
 モテるんだよなあ……
 ふわふわのブラウンの髪が風を含んで悪戯に揺れる。
 俺は黒髪の癖っ毛。
 双子だからって外見を合わせて遊ぶことは滅多にしない。
 勿論一卵性だから、帽子を目深に被るとクラスメイトでもどちらわからなくなる。
 ただ、目付きかな。
 そこで見抜く奴は多い。
 兄ちゃんは、いつも目を細めている。
 だるそうに。
 俺は犬っぽいとか。
 よくわかんねーけど。

「おまたせ~」
「あんまん」
「はいはい」
 二人で頬張りながら歩く。
 猫舌同士、はぐはぐ苦戦しながら。
「んまいよな」
「なんで肉まんて年中売ってくれねえんだろ、俺は毎日でも買うのに」
「お前は世間じゃ少数派」
 相合い傘の下、歩幅もリズムも同じ。
 だから凄い落ち着く。
 彼女がいた時は、歩幅を合わせるのが面倒で仕方なかった。
 それを言ったらキレられてそっから別れに向かったけど。
 当たり前か。
 兄ちゃんは、兄ちゃんならそんなことは言わないし思わないんだろう。
 女子からも人気が高いのはその扱いの上手さだ。
「も一個食べたくね?」
「兄ちゃん夕飯もあんだろ」
「余裕」
「この先のコンビニ、あんまんなかったと思うけど」
「え~。じゃあ諦めるか……臥薪嘗胆の思いで諦めるか」
「大げさ」
 からからと笑う。
 空は真っ暗になっていた。
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