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kiss
第12章 eye
 父さんは東京に単身赴任。
 母さんは父さんがいないことを良いことに毎日どこかに泊まっている。
 濡れた鞄を床に放ってソファに寝転がる。
「おい、風呂入るか着替えろ」
「兄ちゃん先入れば?」
 スマホを取り出していじる俺に視線が突き刺さる。
「……なに?」
「お前さ……さっきの話、どういうこと」
「さっきって?」
「先輩のだよ」
 ああ。
 あれか。
 目線を上げもせずに答える。
「別に。入部から妙に絡んでくる先輩が二人いて、こないだ終わった後に待ち伏せされて……なんか告白っぽいのされた」
 よく覚えてもいない。
 は?
 その一言で全部片付けられたから。
 一人は本気っぽかったけど。
 追いかけられてメアド訊かれたし。
 教えなかったけど。
 兄ちゃんが眼鏡を拭きながら近づいてくる。
「なんでオレに言わなかったの?」
「キモイじゃん。男に告られたとか」
「だから?」
「言うことでもねえかなって。つかなに? しつこくない?」
 カタン。
 テーブルに眼鏡が置かれる。
 ふと、顔を上げようとしたら兄ちゃんが目の前にいた。
 手すりに肘をついて、俺の方に身をかがめて。
 スマホが指から滑り落ちる。
「え……」
 こんなに近くで兄ちゃん見たのいつ以来だろ。
 奇妙な感じ。
 鏡に顔を近づけたときみたいに。
「なに?」
「そいつら、引退してんの?」
「次の大会でだけど」
 時計の音が耳に障る。
 意識が兄ちゃんに集中してるんだ。
 流しながらの会話とは違う。
 静寂の中の会話は重く心に響く。
 それが、俺は苦手だ。
 身を起こして兄ちゃんから距離を取る。
「別に心配するようなことはねえよ?」
「心配するようなこと……?」
 ギシリ。
 片膝をソファにかけて肩を掴まれる。
「なあ。それってどういうこと?」
「は?」
「お前そういうのわかってて言ってんの?」
「だから、なんだよ? 兄ちゃん今日おかしくね」
 するりと首を撫でられぞくぞくとする。
 ばっと手を払った。
 なんだ?
 今の。
 ただ手が当たってただけなのに。
 瞳が離れない。
 兄ちゃんが目を逸らしてくれない。
 だからか。
 心がざわざわする。
 なんだこれ。

「お前さ、男同士のやり方知ってる?」

 今までで一番低い兄ちゃんの声だった。
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