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kiss
第12章 eye
「なん……っ」
ああ、違う。
冗談じゃないんだ。
声色でそれくらいわかる。
茶化せない空気。
「……やったことねえけど」
真顔が嫌い。
兄ちゃんの真顔は、澄み過ぎている。
それが怖くて嫌い。
肩に乗っていた手がするりとわき腹に降りてくる。
指が肉を指圧する。
びくびくと筋肉が震える。
「ちょ、兄ちゃん?」
くすぐったい。
でも笑えない。
カチカチカチ……
秒針がうるさい。
テレビ。
ラジカセ。
着信でもいい。
雑音が欲しい。
だって、これじゃあ……
逃げれない。
「っくく」
兄ちゃんが笑って俯く。
なんだ。
なんで。
なんなんだよ。
カタカタ震えながら笑って。
「おっまえさあ……」
あれ。
何も言葉が出てこない。
兄ちゃんが笑みを貼り付けたまま顔を起こす。
「だから心配なんだよ」
一瞬で笑みが消える。
だから、それも本気。
本気の、警告。
ぽんぽんと頭を撫でられる。
俺の口はまだ動かない。
「気を付けろよ」
次にはっとしたとき、シャワーの音が聞こえた。
いつの間に兄ちゃんがいなくなったかもわかってなかった。
こんなこと、今までなかったのに。
靴下を脱ぎ捨てて部屋に入る。
閉めた扉にずるずるともたれて落ちる。
電気も付けてないのに、真っ暗な部屋がよく見渡せた。
ざわざわはもう消えたのに。
今度は嫌なくらい落ち着いている。
思考停止?
間近で見た兄ちゃんの眼が、眼鏡を通さずに見た瞳が、意識を独占してる。
ああ、どうして。
あんなことを聞いたからか。
先輩の話なんか出さなければよかった。
あんな顔、見たくなかった。
生まれたときから一緒の自分と同じ顔が、自分ではしたことの無い表情をして。
髪を掻き毟る。
ぼさぼさになってから手を止める。
「なんで……」
どのことに対して出た疑問か自分でもわからなかった。
ああ、違う。
冗談じゃないんだ。
声色でそれくらいわかる。
茶化せない空気。
「……やったことねえけど」
真顔が嫌い。
兄ちゃんの真顔は、澄み過ぎている。
それが怖くて嫌い。
肩に乗っていた手がするりとわき腹に降りてくる。
指が肉を指圧する。
びくびくと筋肉が震える。
「ちょ、兄ちゃん?」
くすぐったい。
でも笑えない。
カチカチカチ……
秒針がうるさい。
テレビ。
ラジカセ。
着信でもいい。
雑音が欲しい。
だって、これじゃあ……
逃げれない。
「っくく」
兄ちゃんが笑って俯く。
なんだ。
なんで。
なんなんだよ。
カタカタ震えながら笑って。
「おっまえさあ……」
あれ。
何も言葉が出てこない。
兄ちゃんが笑みを貼り付けたまま顔を起こす。
「だから心配なんだよ」
一瞬で笑みが消える。
だから、それも本気。
本気の、警告。
ぽんぽんと頭を撫でられる。
俺の口はまだ動かない。
「気を付けろよ」
次にはっとしたとき、シャワーの音が聞こえた。
いつの間に兄ちゃんがいなくなったかもわかってなかった。
こんなこと、今までなかったのに。
靴下を脱ぎ捨てて部屋に入る。
閉めた扉にずるずるともたれて落ちる。
電気も付けてないのに、真っ暗な部屋がよく見渡せた。
ざわざわはもう消えたのに。
今度は嫌なくらい落ち着いている。
思考停止?
間近で見た兄ちゃんの眼が、眼鏡を通さずに見た瞳が、意識を独占してる。
ああ、どうして。
あんなことを聞いたからか。
先輩の話なんか出さなければよかった。
あんな顔、見たくなかった。
生まれたときから一緒の自分と同じ顔が、自分ではしたことの無い表情をして。
髪を掻き毟る。
ぼさぼさになってから手を止める。
「なんで……」
どのことに対して出た疑問か自分でもわからなかった。