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kiss
第12章 eye
セックスを拒否するようになってすぐ彼女と別れた。
女ってヤれる男がいればそれでいいのか。
わかんね。
振られたショックは一時間となかった。
涙も出なかった。
向こうが俺を好きになって嫌いになった。
それだけ。
おかしいな。
ちゃんと好きだった時もあったのに。
キスにどきどきしてたのに。
今は彼女を見てもなんとも思わない。
「あ、兄ちゃん」
校門の前で鉢合わせする。
兄ちゃんは知らない女子と歩いていた。
俺に気づいて女子が去る。
パタパタと。
「誰あれ」
「別に」
「別にって」
茶髪ストレートの細い小さい女子。
「可愛いじゃん」
「じゃ、お前付き合えば?」
「あのさあ……兄ちゃんモテるからってその辺無頓着すぎじゃね」
「なあ」
真剣な眼で俺に問う。
「女って気持ちイイか?」
あれ、どっちだ。
これは、どっちだ。
いつから俺は兄ちゃんの本気と冗談を見抜けなくなったんだろう。
ふっと笑みを浮かべる。
「馬鹿。さっさと答えろ」
「えっ? あ、冗談?」
兄ちゃんはそれには答えずに図書室に入って行ってしまった。
ざわざわ。
少しずつ強くなってないか、これ。
なんで俺は、俺と同じ顔にこうも苦しめられてるんだ。
いや違う。
俺が勝手に苦しんでんだろどうせ。
だって、機嫌良くなるから。
俺が昨日別れたって言ってから、兄ちゃんが明らかに嬉しそうだったから。
「どっちだぁ……」
頭を抱えて教室に戻る。
昼休みはもう少し。
友人と他愛もない話から少し踏み込んでみる。
「その人のこと考えてざわざわ落ち着かなくなんのってどう思う?」
「は? 好きな奴でもいんの」
「じゃなくて」
「好きかどうかわかんねえってこと?」
「そうなのか……?」
上を向いて思案する。
「手っ取り早いのはあれだろ。その子で抜けるかじゃねえの」
「んなこと言ったらAV女優に恋してんじゃん」
「あれも抜けるのと抜けねえのあるだろ」
「んー……」
「なんだよ。うぜえ」
チャイムが鳴る。
五限は古典か。
眠い。
ちらりと前の扉を見ると、丁度イヤホンをした兄ちゃんが入ってきた。
さらりと髪が揺れる。
あれ。
あんなに恰好よかったか。
眼鏡も、あんなに細かったっけ。
その後ろから教師が入ってくる。
眠気は消え去っていた。
女ってヤれる男がいればそれでいいのか。
わかんね。
振られたショックは一時間となかった。
涙も出なかった。
向こうが俺を好きになって嫌いになった。
それだけ。
おかしいな。
ちゃんと好きだった時もあったのに。
キスにどきどきしてたのに。
今は彼女を見てもなんとも思わない。
「あ、兄ちゃん」
校門の前で鉢合わせする。
兄ちゃんは知らない女子と歩いていた。
俺に気づいて女子が去る。
パタパタと。
「誰あれ」
「別に」
「別にって」
茶髪ストレートの細い小さい女子。
「可愛いじゃん」
「じゃ、お前付き合えば?」
「あのさあ……兄ちゃんモテるからってその辺無頓着すぎじゃね」
「なあ」
真剣な眼で俺に問う。
「女って気持ちイイか?」
あれ、どっちだ。
これは、どっちだ。
いつから俺は兄ちゃんの本気と冗談を見抜けなくなったんだろう。
ふっと笑みを浮かべる。
「馬鹿。さっさと答えろ」
「えっ? あ、冗談?」
兄ちゃんはそれには答えずに図書室に入って行ってしまった。
ざわざわ。
少しずつ強くなってないか、これ。
なんで俺は、俺と同じ顔にこうも苦しめられてるんだ。
いや違う。
俺が勝手に苦しんでんだろどうせ。
だって、機嫌良くなるから。
俺が昨日別れたって言ってから、兄ちゃんが明らかに嬉しそうだったから。
「どっちだぁ……」
頭を抱えて教室に戻る。
昼休みはもう少し。
友人と他愛もない話から少し踏み込んでみる。
「その人のこと考えてざわざわ落ち着かなくなんのってどう思う?」
「は? 好きな奴でもいんの」
「じゃなくて」
「好きかどうかわかんねえってこと?」
「そうなのか……?」
上を向いて思案する。
「手っ取り早いのはあれだろ。その子で抜けるかじゃねえの」
「んなこと言ったらAV女優に恋してんじゃん」
「あれも抜けるのと抜けねえのあるだろ」
「んー……」
「なんだよ。うぜえ」
チャイムが鳴る。
五限は古典か。
眠い。
ちらりと前の扉を見ると、丁度イヤホンをした兄ちゃんが入ってきた。
さらりと髪が揺れる。
あれ。
あんなに恰好よかったか。
眼鏡も、あんなに細かったっけ。
その後ろから教師が入ってくる。
眠気は消え去っていた。