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kiss
第13章 arm

 奈津は、にやりと笑ってボディソープを体に塗りたくり始めた。
 長い指で。
「初めて会ったときの言葉引きずりすぎだろ颯」
「記憶いーの」
 そう。
 よく覚えている。
 奈津の家の前で。
 記憶の中で二人がまた出逢う。
ーなにしてんの、あんたー
ー……轢き逃げされたー
ーうっそ。喧嘩じゃないのー
ー……ー
ーま……とりあえずうち入ればー
 怪我した他人を家に招き入れて。
「あんときは本気でバカだと思った」
「うわ。失礼ね、お前」
 だって本当だ。
 これから探りながら近づこうとしていた相手にまさか声をかけられ、家に招かれるなんて。
 本気で自分がバカだと……
 颯はぼんやりと首筋を擦る。
 あれは、そう。
 偶然だったんだ。
 暴走車が歩道に突っ込んできて、周りにいた高校生の集団を無意識に押し退けようとして。
 結局自分が一番重症だったか。
 衝動だったから、自己嫌悪はあとから襲いかかってきたな。
 それに浸る間もなく警察と救急が来る前に逃げないとって。
 身元なんてばれて良い試しがない。
 だから。
 怪我したまま這いずって。
 バカ真面目に目的の下見だけでもって家の塀に手をかけた瞬間だった。
ーちょっと。何か用?ー
 想像の声より緩慢で、気だるそうな。
 あんたの声。
「颯はさ、弟みたいな……そんな感じなんだよ。だからいなくなったら寂しいわけ。んー……そうだな。まあ、いなくなんなよ」
「曖昧で意味わかんねーよ」
「そうね」
 奈津が目を閉じて口許を緩ませる。
 眼ほどに語る唇。
 何度も目を引き付けられる。
 ガタン。
 奈津が桶を拾い、山のなかに無造作に置くと、湯船に向かった。
 急いで泡を流し落とし追いかける。
 足先から浸かり、どちらからともなく壁際にもたれかかった。
「あー……いいなやっぱ」
 気が抜けたように。
 全身脱力して。
 隙だらけ。
 颯は殺意のこもった手を抑えるように湯に沈めた。
「ねぇ、颯」
「ん」
「俺の麻雀の稼ぎだけじゃさ、難しいかもしんないけど……もうちょい一緒に暮らそう」
 ぴちゃん。
 天井からの滴が目の前を跳ねる。
 こんなにも湿った空間で唇が乾く。
「帰るんなら……ソレでも良いけど」
「帰んないけど」
「そっか」
 少しだけ嬉しそうに。
 二人は顔を熱で赤らめて、見つめあった。
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