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kiss
第13章 arm
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殺す。
殺す。
その為だけの身体。
ターゲット。
殺人術。
非日常の日常。
颯は掌を目の前に広げて横たわっていた。
何人殺したっけ。
この手で。
パン。
目線を上げると、奈津が手を合わせていた。
それからにっと笑って潰した羽虫を見せる。
「一発」
「何匹いると思ってんだよ」
ぼやきながら肩に止まっていた虫を叩く。
「さあ。毎日変わってるかもしれないし」
「なにが」
「メンバー」
「ははっ。なにそれ」
虫けら。
手を叩いただけで死ぬ虫けら。
でも、人間も似たようなものだ。
指先一寸で死ぬ。
たとえば頸動脈にナイフ。
局部に針。
電極に爪先。
いくらでも。
「おれは死んでも虫にはなりたくねーなー」
「そうか?」
ティッシュで手を拭いながら奈津が近づく。
「俺は別に虫でもいいけど」
「そう?」
どうでもいい話。
それでも二人は寝るまでの暇を弄ぶように続ける。
「虫になってどこまでも飛んで行ってみたくねえ?」
「じゃあ鳥が良い」
「鳥はだめだ。頭が軽いし悪い」
「それ脳みその量の話だろ」
前にテレビで見た。
本当かどうかもわからない脳の容量の特集。
何cc。
エンジンの容量と同じ単位で。
脳みそってのは人間のエンジンってことか。
そんなことも話してたな。
「虫ってなんで人の家に入ってくんだろうな。自然に住んでりゃいいのに」
「人間観察に来てるんじゃないの」
「なんで?」
「俺はまだ虫じゃないからわかんないけど」
「まだってなんだよ」
力なく笑う。
「颯は死んだら何になりたいわけ?」
ベッドの向かいの長椅子に腰かけ、奈津が言う。
少し考えてみる。
死んだら。
殺した後はたまに考える。
こいつらどこ行くんだろ。
生きてる自分には絶対わからない場所。
死んだらこいつらがいるのかな。
それともとっくに輪廻の果て?
「死にたくないなー」
「え?」
「あ。今の無し」
「ははっ。颯らしい」
やべえ。
本音が出た。
いや。
本音?
それもわからない。
無意識に出た。
「じゃあ俺もそれで」
脳の中に響いた。
俺もそれで。
俺も死にたくない。
ああ。
なんて馬鹿な答え。
殺す。
その為だけの身体。
ターゲット。
殺人術。
非日常の日常。
颯は掌を目の前に広げて横たわっていた。
何人殺したっけ。
この手で。
パン。
目線を上げると、奈津が手を合わせていた。
それからにっと笑って潰した羽虫を見せる。
「一発」
「何匹いると思ってんだよ」
ぼやきながら肩に止まっていた虫を叩く。
「さあ。毎日変わってるかもしれないし」
「なにが」
「メンバー」
「ははっ。なにそれ」
虫けら。
手を叩いただけで死ぬ虫けら。
でも、人間も似たようなものだ。
指先一寸で死ぬ。
たとえば頸動脈にナイフ。
局部に針。
電極に爪先。
いくらでも。
「おれは死んでも虫にはなりたくねーなー」
「そうか?」
ティッシュで手を拭いながら奈津が近づく。
「俺は別に虫でもいいけど」
「そう?」
どうでもいい話。
それでも二人は寝るまでの暇を弄ぶように続ける。
「虫になってどこまでも飛んで行ってみたくねえ?」
「じゃあ鳥が良い」
「鳥はだめだ。頭が軽いし悪い」
「それ脳みその量の話だろ」
前にテレビで見た。
本当かどうかもわからない脳の容量の特集。
何cc。
エンジンの容量と同じ単位で。
脳みそってのは人間のエンジンってことか。
そんなことも話してたな。
「虫ってなんで人の家に入ってくんだろうな。自然に住んでりゃいいのに」
「人間観察に来てるんじゃないの」
「なんで?」
「俺はまだ虫じゃないからわかんないけど」
「まだってなんだよ」
力なく笑う。
「颯は死んだら何になりたいわけ?」
ベッドの向かいの長椅子に腰かけ、奈津が言う。
少し考えてみる。
死んだら。
殺した後はたまに考える。
こいつらどこ行くんだろ。
生きてる自分には絶対わからない場所。
死んだらこいつらがいるのかな。
それともとっくに輪廻の果て?
「死にたくないなー」
「え?」
「あ。今の無し」
「ははっ。颯らしい」
やべえ。
本音が出た。
いや。
本音?
それもわからない。
無意識に出た。
「じゃあ俺もそれで」
脳の中に響いた。
俺もそれで。
俺も死にたくない。
ああ。
なんて馬鹿な答え。
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