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kiss
第14章 thigh
 換気扇の音がする。
 別にタバコの臭いなんて些細な問題だが、吸うときには少し気にしてしまう。
 ちらりと男を見ると、中指を上にタバコを挟んで持って吸っていた。
 俺は口を押さえて吸う方が合っている。
 だが、なんとなくその自分の手の中に仕舞うような吸い方が格好よく見えた。
 いや、あれか。
 男が格好良いからか。
 つい観察してしまう。
 セットされた耳元くらいまでの黒髪。
 出来るタイプの人間らしい剃り残しのない整った顎と柔らかい眉尻。
 営業かな。
 この男が玄関に現れたら何かは買わされてしまいそうだ。
「名前を聞いても良いかな」
 急にこちらを向いたので、不躾に眺めていたことが恥ずかしくなって顔を逸らす。
「……田神です」
「まだ二十代半ばだよね?」
「はい。そちらは……」
「馬潟だ」
「島根の?」
「よく知ってるね。仕事場かい?」
「いえ。同僚が馬潟出身だったもので」
 一度聞いたら妙に残る名前だ。
「田神くん」
「はい?」
 低音の心地良い声に呼ばれて背筋に緊張が走る。
 馬潟は灰が落ちそうなタバコを傾けて困った顔をした。
「携帯灰皿持ってる?」
 咄嗟に胸ポケットを探る。
 あれ?
 いつもは……
「ないみたいです」
「んー。どうするかな」
 こんなにも非現実的な状況なのに、灰を気にして二人で頭を傾げるのはどこか空寒く感じた。
 外とは連絡もとれない密室。
 何故ここにいるのか記憶もない。
 死体が転がってるわけでも足枷とノコギリがあるわけでもない。
 カメラは?
 見渡したが、それらしい黒い丸は見つからなかった。
 いやなざわめきもない。
 言うなれば、出張のビジネスホテル。
 もっとも、一人ならパニクっただろう。
 床を焦がさないように慎重に灰を扱う馬潟。
 この男がいるから。
「ここはどこなんでしょうね」
「ライバル企業に恨みを買って誘拐されたのか、変態科学者の実験に付き合わされるのか。そういったところかな」
「馬潟さん経験でもあるんですか」
「ただの映画の見すぎだよ」
 伏し目になると睫毛が揺れる。
 体つきはアスリート系なのに、中性的な人だ。
「たとえば世界に二人きり」
「え?」
「これも映画の受け売りだがね。この部屋から出たら世界はとっくに滅びていて、私と君の二人しか生き残っていなかったりする。そう考えると面白いかもしれない」
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