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kiss
第14章 thigh

 あれ。
 寝かせた体を起こす。
 マットを手で押してみる。
 なんか、これ……
「どうかしたのかい?」
「いえ。なんか、普通の部屋のベッドっていうより、高級な感じなんで」
 そう。
 独り暮らしを始める前に物好きで見に行った家具屋の一番高いベッド。
 反発感が違うんだ。
 もう一度横たわる。
 寝やすい。
 凄いリラックスする。
 でも、待てよ。
「なんで?」
 また落ち着かなくて起き上がる。
 流石に馬潟が吹き出した。
「なんだい。ピョコピョコと」
「いや、おかしいですよ。なんでわざわざ高いベッドなんて用意してるんだ……一体その目的は」
「真っ白な壁でなければラブホテルみたいだ」
「ちょ、やめてください。笑えない」
 馬潟はそれでも楽しそうに笑っていた。
 調子が狂う。
 俺はなんでもっと警戒心とかがないんだ。
 ここは知らないとこで。
 馬潟だって身元さえわからないのに。
 ずしりと重い考えがのしかかる。
 それはとても嫌な考えだ。
 ざわめく。
 電車で眼を閉じた瞬間。
 切り取ったように光景が浮かぶ。
 隣のデブが嫌悪感を独占していたが。
 よく思い出せ。
 ぎしり。
 はっと焦点を合わせると、馬潟がベッドに腰かけていた。
 俺の腰元辺りに。
 手をこちらについて、俺を見下ろすように身を屈める。
 パーソナルスペース。
 そんな概念を聞いたことがある。
 女は円形で狭く、男は楕円形で広いって。
 その分、前への警戒心が強く、横への意識は男の方が薄いんだったか?
 何故一瞬でこんなことを思い出したのか。
 一気に、侵犯されたから。
 ギシ。
 馬潟の両目に自分が見える。
「……あの」
「あっという間だろう?」
「な、にが」
「近づかれるのなんて予想もしなかったか?」
「……馬潟さん?」
 頬を手で包まれても動けない。
 首筋が熱い。
 汗が吹き出してくるのがわかる。
「そう怯えるな。良いベッドも用意したんだ」
「あ、んた……俺を」
 白い歯を覗かせて馬潟が微笑む。
 ああ、この綺麗な笑顔嫌いだ。
 政治家の笑い方のようで。
 偽りに見える。
 ぞくり。
 また、悪寒。
「近くで見ると可愛いな。田神くん」
 声というより吐息に近い。
 いた。
 見つけた。
 記憶の断片の、あの電車の向かい席から三つ右に。
 こいつは座っていた。
「あんた……誰、だ?」
 
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