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kiss
第14章 thigh
胃の辺りの筋肉が下から収縮して、吐瀉物が唇まで上がってくる。
吐きたいのに、頭を捕まれて成す術もない。
ようやく言うことを聞いてきた手も、力なく馬潟の太股を押して逃げようとするだけ。
「顔を上げるんだ」
「ん、ふぶっ、む、ん」
鼻から体液が止めどなく流れる。
汚い。
俺自身がなにより汚い。
涙で視界が歪んで、馬潟の顔も滲む。
粘ついた精液と唾液が混ざって喉奥にこびりついていく。
息を止めても肺まで下りてくる臭いに、全身が犯されてるみたいだ。
「そんなに泣くな。壊したくなる」
優しく囁き、馬潟は俺の頭を両手で掴んで射精した。
制御できない吐き気に、力づくで馬潟を押し退けるがびくともしない。
パニックに陥って手当たり次第殴っても口は塞がれたままで、耳から血が吹き出しそうな灼熱を感じ、死を考えた。
吐きたい。
今すぐ。
中身を全部。
「飲むんだ」
無慈悲な声が響く。
「汚ならしい胃の中身も唾液も全部飲むんだ」
ごぐり。
喉に槍でも刺さったような痛みと共に液体が下っていく。
ボタボタと涙が零れた。
鳥肌が立ち、ガクガク震えている。
飲んでしまった。
無数の精子が体中を食い尽くしていくイメージに捕らわれた。
もう、俺は戻れない。
今朝に。
汚れてしまった。
取り返しのつかない。
ふ、と部屋が暗くなる。
照明を下げたような。
だがそれは違った。
瞳から光が消えると、世界も暗くなる。
「そんな眼をするな。田神くん」
ずぷり、と口から性器を抜かれ、床にびちゃっと液体が散った。
馬潟が顔を近づけ、頬を舌でなぞった。
涙や汗を一滴残らず舐めとるように、顔中を這う。
半開きの眼を。
冷や汗に濡れた生え際を。
鼻孔を。
ぴちゃぴちゃと。
異常な愛撫に下半身がひくつく。
馬潟は最後に唇を食み、酸っぱい舌を蹂躙した。
「ん、んむ……」
たった十数分の出来事で心が脆く崩れ落ちた。
「んっく」
馬潟の足が半起ちの性器を踏みつける。
その刺激にびくりとして、緩く噛んでしまった。
馬潟は血の滲む唇を離し、怪しく笑む。
赤い舌が血を舐めた。
「上手に出来たご褒美をあげようか」
手を引かれて、俺は魔窟のようなベッドに横たわった。