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第14章 thigh

「あっん、は、う」
　馬潟の頭を押し退けようと必死に抵抗するが、身をよじるしかできない。
　下着まで剥ぎ取られた太股を開かされ、何度達してもなぶられ続ける。
「いっ、あああ」
　はーっ、はーっ、と空気を求めるも束の間、根本からゆっくり固い舌でなぞられるだけでまた先走りが溢れる。
　ジュプ。
　ぶちゅり。
　わざと音を立てて、煽る。
　痛いほどイイ。
　フェラなんて前の彼女に一度きりしかやらせたことないから、こんなに気持ちいいと思わなかった。
　馬潟から逃れるように眼を両腕で塞ぐ。
　歯を強く噛んでも声が漏れる。
「ひっ、いっうく、は、んっ」
　腿がつりそうなほど爪先まで力が籠る。
「さっきからあえぎ声しか聞いてないよ。田神くん。言葉を忘れたか？」
「あっん、や、えて」
　馬潟が話す吐息だけで感じる。
　助けて。
　誰か助けてくれ。
　イキ地獄だ。
「っん」
　腹の筋肉がぎゅっと縮んだ。
　新たな強烈な刺激に。
「ああ。きついな。これは難儀そうだ」
　こわごわ見下ろすと、馬潟の指が股間にめり込んでいた。
「あ……や、めろ」
「ちゃんとほぐしてあげるよ。私も痛いのは好きじゃないからね」
　そう言いながら二本目が突き刺さる。
　声にならない悲鳴が上がった。
　抜き差しされる度に屈辱的な音が鳴る。
　嘘だ。
　これは全部嘘なんだ。
　回路がショートした脳の勝手な逃避。
　ヌプヌプ、と。
　段々さっきまでの快感に近いものが込み上げてくる。
「な、んで……っ」
　不意に出た言葉。
　馬潟の指が止まった。
「……どう、して……俺が」
　こんな目に合わなきゃいけない。
　なんで俺なんだ。
　怒りじゃない。
　単純に理不尽への疑問。
　ぶつけるものがもうそれしかないから。
「……決まってるじゃないか」
　三本目が強引に入ってくる。
「っひ、ぎ」
「君が私の好みだからだ」
　馬潟の幸せそうな口調が恐ろしかった。

　機械音が静かな部屋に鳴り響く。
　性器に巻き付けられたローターと、挿入されたスイング式のバイブが震えている。
「……い……んぁ、ん……ぁ」
　びくびく断続的に痙攣する俺を、馬潟は煙草を片手に眺めていた。
　目が覚めたときのように、小綺麗なサラリーマンのまま。
　俺はシャツ一枚で玩具に犯されて。
　ベルトで縛られた腕が、頭上でひきつりそうなほど痛むが、抵抗の力はもうない。