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kiss
第14章 thigh
落ちそうな灰をポケットから取り出した銀の筒に落とす。
そのまま煙草を入れると、ベッドの前に立った。
なんていう温度差で見下ろしてくるんだ。
「田神くん。悪いけど二時間ほど予定が入ってしまった。戻ってくるまで起きて待っててくれ」
朝の占いの話でもするトーンで。
それがどれほどの苦痛を目の前の男に与えるか知った上での態度。
「……っん、ほど、け……ぃいっ」
「戻ってきたらな。それにしても本当に綺麗な体だ……白くて細くて」
冷たい手のひらで腹をなぞられ、言い様のない不快感に田神は身をよじった。
「うん。まだこれだけの感度があるなら期待大だ」
馬潟は身を起こし、横たわった田神からは死角になる床にしゃがみ、板に手をかけ上に持ち上げる。
畳一畳分の空間がそこに開けた。
下には階段が続き、階下の馬潟の住居に繋がっている。
降りかけた馬潟は何かを思い返したように田神に近づくと、陰部に射し込まれたバイブを抜き、代わりに一回り大きいディルドを挿入した。
「はっ、ぅぐ」
「……緩い方が好きなんだ。これで耐えててくれ。ああ……抜けていたら」
田神の目が見開かれる。
焦点の合わない近さに馬潟の指先が静止していた。
「……目を潰してあげるから」
はっはっ、と息だけが響く。
静かな殺気にバイブて犯されていたときよりも全身が怯えて汗を噴き出していた。
本気だ。
そもそも成人男性一人を拉致できるような男。
常識なぞ期待できるわけがない。
「っく、怯えすぎだ。冗談だよ」
そう笑いながら更に奥へとめり込ませる。
田神は下唇を噛んで声を殺した。
鼻から荒く息が洩れる。
今度こそ馬潟は階下に消えた。
残された田神は圧迫感に眉を潜めながらも力を入れぬようゆっくりと身を横向きにする。
視界が突如歪み始めた。
涙が前触れもなく目の前を覆った。
なんだこれは。
目をつむると、頬に伝う。
汚い。
舐められた顔を削ぎ落としてしまいたい。
熱湯に体を浸けてしまいたい。
なんで俺が。
「……ふ、ふふ、くくく」
笑いに肩が揺れる。
バカらしい。
なんて状況だ。
目を部屋に這わせるが、馬潟が消えたあたりの床を見ても違和感はない。
どこかの屋根裏部屋か。