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kiss
第4章 ★rouge
「あたしは、東京行こうと思うの」
舞の言葉に目を見開く。
一瞬にして温かいお湯が冷水になって突き刺さってくる。
「え……」
「友美に言うの遅くなっちゃったけどさ、前に話したでしょ? 教わりたい絵の先生が東京の大学にいるの」
白い煙の中で妖精みたいに微笑みながら、悪魔みたいなことを告げる。
湯船にしがみつくように、私は爪を立てた。
「友美は?」
舞がすり寄る。
柔らかい肌。
無防備な肌。
「わ……私は」
バシャッと湯から出る。
重力に従って、水が滝のように落ちる。
キョトンとした顔がこちらを見上げている。
「舞はさ、私の知らない世界に行っちゃいそうだね」
声が震えている。
「なに言ってるの……」
舞の言葉を消すように浴室から飛び出した。
「風邪引いちゃうよ」
舞がパジャマを掛ける。
バスタオル一枚にくるまってソファにうずくまる私に。
気づかなかった。
寒さに背中がカタカタ痙攣してる。
「怒ってるの?」
そっと顔を上げる。
目を疑った。
キャミソールに下着だけ。
舞こそ風邪を引きそうだ。
細い腿から目を逸らす。
「別に怒ってるわけじゃなくて」
「本当?」
ギシ。
ソファに舞が膝をかける。
四つん這いに近い態勢で近付いてきて、理性を失いそうになる。
なんでそう無防備になるのかな。
こっちは必死で堪えてるのに。
「怒ってるんじゃなくて、寂しいだけ。舞、一緒に神奈川行くって約束してたのに忘れちゃったのかなって」
「忘れてないよ。まだ中学なのにアパート探しって二人で神奈川まで見に行ったよねー」
思い出し笑いをしながらクッションを抱く。
「ずーっと一緒にいると思ってた」
「そうだね」
シャンプーの香りが漂ってくる。
同じものを使っているのに、甘い。
「友美」
「ん?」
「服着たら?」
「ん」
「聞いてる?」
「舞」
「なぁに」
「好き」
「え?」
「大好き」
「なんで、いきなり」
「私は舞が好き」
腕を掴む。
そのまま部屋に強引にひっぱる。
ベッドに押し倒してから、舞の上に乗る。
「な……友美」
裸体を晒して、覆い被さる私に動揺する舞。
お風呂とは違う。
服を纏っていない違和感。
キャミから覗く鎖骨。
細い二の腕。
下着に密着した股が濡れている。