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kiss
第5章 touch
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「なんもないで」
男達がやっと手を離す。
俺は蹴り上がるように勢い良く立ち、背広を正した。
「護身用もなにも持たずに運んでるとは」
「途中で捕まったら言い訳しようがありませんからね」
鵜亥は大袈裟に目を見開き、高らかに笑った。
「はっはは……面白い男だな、フラン。それだけ危険物を運んでおいて自分がかわいいか」
「お受け取りくださいますね」
「まぁ、そう焦るな」
ケースを拾い、鵜亥が中身を確認する。
「確かに」
「代金は指定された口座に入れてください。失礼します」
ガッ。
目の前の扉を腕で塞がれる。
見ると初めの男。
「……なんです?」
「お前の取り分はええんか」
「雇い先から戴きますから」
「離してやれ、汐野」
素直に腕が引っ込む。
「どうも」
「また貴方に頼もうか」
「指名制はありませんから」
「はははは、そうつれなくするな」
「失礼」
今度こそ部屋を出る。
長居はデメリットしか生まない。
コンクリートに囲まれた階段を下りる。
踊場に来たとき、駆け上がってきた青年とぶつかった。
小柄な青年は派手にこけて、壁に激突する。
手を差し出すが、払われた。
「触んなや」
「立てるんか」
「……ッ」
足を挫いたんだろう。
辛そうに顔をしかめる。
無理やり起こした。
そして、その軽さに目を見張った。
まだ中学生じゃないか。
ほっそりとして、小さい。
顔を見下ろすと、悔しそうに赤らめて逸らされた。
「大丈夫やって」
「何階に向かうんや?」
「……そこの事務所や」
見ると、今出て来た部屋。
溜め息を吐き、階段を上がった。
青年に肩を貸したまま。
ガチャン。
「おっ。また戻って来たで」
「そちらの青年をお届けに」
鵜亥が煙草を片手に現れる。
「巧?」
サァッと青年が青ざめた。
「その……鵜亥さん、ちょっと転んだだけで」
「怪我、したのか」
ブンブンと首を振る巧という青年。
俺の肩から手を外し、気丈に振る舞うがよろけている。
鵜亥が引き寄せ、首筋を撫でた。
「んんッ……」
「そんなに痛そうにして、すぐに横にならないと」
「大丈夫やから……ほんまに」
怯えてる?
俺の目線に気づいた鵜亥が微笑む。
「届けてくれてありがとう。さ、運び屋様がお帰りだ」
男達がやっと手を離す。
俺は蹴り上がるように勢い良く立ち、背広を正した。
「護身用もなにも持たずに運んでるとは」
「途中で捕まったら言い訳しようがありませんからね」
鵜亥は大袈裟に目を見開き、高らかに笑った。
「はっはは……面白い男だな、フラン。それだけ危険物を運んでおいて自分がかわいいか」
「お受け取りくださいますね」
「まぁ、そう焦るな」
ケースを拾い、鵜亥が中身を確認する。
「確かに」
「代金は指定された口座に入れてください。失礼します」
ガッ。
目の前の扉を腕で塞がれる。
見ると初めの男。
「……なんです?」
「お前の取り分はええんか」
「雇い先から戴きますから」
「離してやれ、汐野」
素直に腕が引っ込む。
「どうも」
「また貴方に頼もうか」
「指名制はありませんから」
「はははは、そうつれなくするな」
「失礼」
今度こそ部屋を出る。
長居はデメリットしか生まない。
コンクリートに囲まれた階段を下りる。
踊場に来たとき、駆け上がってきた青年とぶつかった。
小柄な青年は派手にこけて、壁に激突する。
手を差し出すが、払われた。
「触んなや」
「立てるんか」
「……ッ」
足を挫いたんだろう。
辛そうに顔をしかめる。
無理やり起こした。
そして、その軽さに目を見張った。
まだ中学生じゃないか。
ほっそりとして、小さい。
顔を見下ろすと、悔しそうに赤らめて逸らされた。
「大丈夫やって」
「何階に向かうんや?」
「……そこの事務所や」
見ると、今出て来た部屋。
溜め息を吐き、階段を上がった。
青年に肩を貸したまま。
ガチャン。
「おっ。また戻って来たで」
「そちらの青年をお届けに」
鵜亥が煙草を片手に現れる。
「巧?」
サァッと青年が青ざめた。
「その……鵜亥さん、ちょっと転んだだけで」
「怪我、したのか」
ブンブンと首を振る巧という青年。
俺の肩から手を外し、気丈に振る舞うがよろけている。
鵜亥が引き寄せ、首筋を撫でた。
「んんッ……」
「そんなに痛そうにして、すぐに横にならないと」
「大丈夫やから……ほんまに」
怯えてる?
俺の目線に気づいた鵜亥が微笑む。
「届けてくれてありがとう。さ、運び屋様がお帰りだ」
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