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kiss
第1章 kiss
 ギシリ。
 類沢が手をつき、首もとに顔を埋める。
「ふあッッ……んぁ」
 唇が吸い付く感覚に悶える。
 紅い痕が残されていく。
 鎖骨にも。
 耳にも。
 歯を立てられると、血でも吸われているんじゃないかというくらい眩暈がした。
「……いッ、ぁぐッッ」
 高い声がイヤになるほど響く。
 俺はまた指を噛んで、堪えようとした。
 すぐにその手を離されてしまう。
「や……っ」
「助けて欲しいんでしょ」
 シャツを捲ると、手首のところに巻きつけ拘束した。
 ザワッと寒気がする。
 脇腹を撫でられ、歯を食いしばる。
 ゆっくり腹から胸に上がって来た指が、ある地点で止まった。
 感覚だけでわかる。
 俺は顔を歪ませた類沢を見上げた。
 荒い息をしながらも、はっきり告げる。
「……もう、大丈夫ですから」
 心臓から左脇にかけての手術痕。
 引き攣る違和感はなくなった。
 しかし、傷は消えない。
 類沢の細い指が、右腕をなぞる。
 そこにも、消えない痕がある。
 類沢は優しくキスをして、右腕を舐めた。
 温かい舌の感触に、俺は笑みを浮かべた。
「先生……くすぐったいです」
 類沢も微笑んで、唇を重ねた。
 長い髪が、頬を撫でる。
 世界で一番安心できる場所。
 離れようとした唇を追い、俺は顔を浮かせた。
 チュッと音を立てて、二人は向かい合う。
「加減出来ないかも」
「結構ですよ……」
 類沢は俺の瞼をなぞり、目を細めた。
「後悔しないでね」
 その眼が影を帯びた。

「ひあっ、ぁあんッッ……ちょ、ぅあッ……まっ……やッ」
 必死に脚を閉じようとしても、両手で押さえつけられている。
 連続する快感に何度となく腰が浮いてしまう。
 類沢はそれを嘲るように、甘噛みをした。
「はッん」
 舌を這わせ、食べられる。
 ガクガクと痙攣して、類沢の口に放った。
 飲み込む喉の音に狂いそうになる。
「溜まってた?」
「そんなの……」
 否定する前に指で先端を擦られる。
「いッッ」
 達したばかりなのに。
 仰け反って足先まで痺れる。
「ハァ………ふッッ先生……こそ」
 類沢の手が止まる。
 やっと解放された快感に早くも戻りたがる体の疼きを抑えて、目を合わせる。
「俺が眠ってた間……どうしてたんですか」
 類沢の顔が無表情になり、俺の髪を掴んで引き寄せる。
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