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kiss
第8章 reach
「……本当に連れてきたんだ」
「お前が舌噛むとか言い出すからな」
「いつもの戯言でしょ」
「はいはい、女王様にはかないませんな」
「凜」
光樹の目線に真っ向から答える。
「あの賭けに乗るの?」
「こんな雨男に負けるわけにはいかないからな。お前には納得してペットになってもらいたい」
憂鬱なため息。
椅子の手すりに足を掛けて、横向きに座る。
キセルを咥えた女王様。
「じゃあ、出てって」
ふいと顔を逸らした光樹の頭をなでる。
すぐに手を払われるが、凜は笑った。
金髪を揺らして。
「もうすぐお前は人間じゃなくなる。ただの玩具になるんだよ」
「早く出てって」
「こいつにも事情は説明しておいたぞ。二時間せいぜい愉しめよ」
足音がなくなるまで振り返ったりしない。
光樹は難しい顔で椅子から降りた。
そして、手を縛られ横たわる男の元に歩く。
裸足で。
ひたひたと。
「……こんな形で再会したくなかったんだけど」
瞑った瞼を撫でる。
涙が溢れる。
「久しぶり。すっごい会いたかったよ、あんたに」
「随分と……荒い友人を持ってるな、お前は」
「寝たふり?」
「聞かれて困る会話か?」
「あっ。それ、女性に嫌われるよ」
言いながら光樹は俺の腕を解放した。
それから耐えきれないように縋り付くと、唇を重ねた。
水音を響かせながらベッドに誘われる。
ギシ。
押し倒されたまま、応える。
「ふっ……あんたって変わんないね」
「俺にとってはただの二週間だったしな」
「おれはいろいろあったよ。あの凜にお願いしてあんた探させちゃうくらい」
「あの凜も、俺はなんにも知らない」
「そうだね……」
それから俺のシャツのボタンをはずしていく。
「すっごい馬鹿な賭けでしょ。あんたと凜で、めちゃくちゃにされて、好きな方についていくなんて」
「聞いたときは絶句したけどな」
「ふふー。だよね」
すっと眼に黒い光がよぎる。
ああ。
あの日が一瞬にして蘇る。