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私を見て
第5章 エストの秘密



若林の案内で入った部屋には複数の男達が居た。
入口に居る俺らに状況は読めないが、俺らの乱入に男達の一人が興味を示した。
前を向かず、黙ったまま、こちらを観察している。
気に入らない、その目。
明らかに俺の視線に気付いて、それで尚、観察を続けている。


「辻、部屋を出て行け。問題ない」
男達で姿が見えないがエストの声がした。

ーー頼む。茉莉を奴等に見せたくないーー

声ではなく、耳に直接聞こえた声はエストのものだ。
でも、エストの姿は男達に隠れて見えないままだ。


「珍しいですね。あなたが他人を気にするのは。彼らに何かあるのですか?」
ソイツはとうとう一歩一歩と近付く。
俺の斜め後ろに長谷川が居る。
たぶんその近くには若林も居るだろう。
何かあったら若林に長谷川は任せよう。


距離が縮まると男の姿見れた。
剣士、騎士と言うんだろうか。
腰に剣を差して、長いマントを羽織って。
スラリと高い背に短く切った頭。
端正な顔立ちに似合わない筋肉。


「私はエストの婚約者なんですよ」
そう言って立ちふさがったその剣士の頭は俺より頭1つ分は大きい。
俺だって小さくは無いのに。
「お客さんが来ているとは思いませんでしたね~。どういったお知り合いですか?」


「ハーネスト、今日のところは帰ってくれ」
「嫌ですよ、この挑戦的な目……私に引き下がれと?」
「頼む、ハーネスト!!」


姿は見えないが、エストの声音は必死だった。


「余計興味が沸きますね~。貴方、お名前は?」
あと数歩のとこまで近付き、上からニヤリと。
挑戦的なのはそっちもだろ。

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