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真珠浪漫物語
第13章 茶碗の中の嵐

悪意の塊のような言葉を投げつけたのは、白峰華子。
ホテル王、白峰侯爵の一人娘で、美人ではあるが姸のある顔立ちをしている。後ろに取り巻きを従えて綾香と梨央を冷ややかに見下ろしている。
白峰侯爵は、娘華子が一目惚れした縣礼也を是非とも婿にと熱望し、縁談を持ち込んだのだが、断られていたのだ。
ゆえに、縣が梨央にプロポーズして以来、北白川家を目の敵にしている。
梨央がめったに行かない過去のお茶会でも顔を合わせると辛辣な言葉を投げかけていた。
梨央がお茶会や夜会嫌いになったのは華子の影響と言っても過言ではなかった。
華子の顔を見た途端、梨央は身を硬くし表情まで凍りついてしまった。
そんな梨央を面白そうに見ながら華子は揶揄う。
「…あら、梨央さん。お久しぶりね。お元気そうで何よりだわ。…ああ、そういえば…貴方、縣男爵様との婚約を取りやめられたそうね?…一体何の不満があって?
縣様はずっと貴方の後見人を務められてお護りしていらしたのに…お気の毒な縣様」
梨央は震えながら俯く。
部屋の隅に控えていた月城が固唾を呑んで見守っていたが、耐えられぬように一歩出たその時、月城の腕を抑える者がいた。
「…縣様!」
遅れて入ってこようとしていた縣であった。
縣は穏やかだが真剣な口調で
「…梨央さんを今、庇うことは得策ではないよ。華子嬢の火に油を注ぐ事になる」
「しかし…!」
「…嫉みや誹謗は社交界では日常茶飯事だ。…これを自分で乗り越えなくては一人前のレディにはなれない…」
「…縣様…!」
月城は唇を噛み、梨央を見つめる。
「…ねえ、もしかして、お隣のお姉様の入れ知恵なのでは?縣様と貴方がご結婚なさったら、お姉様の財産も少なくなってしまいますもの。…梨央さん、貴方、お姉様の口車に乗っておしまいになったのじゃなくて?
お気をつけ遊ばせ。芸者風情の娘なんて最初から財産目当てに決まっているのですからね」
意地悪く高笑いする華子。
…と、梨央は綾香が侮辱されたのを聞いた途端、立ち上がり、今まで誰も聞いたことがないような強い口調で言い返した。
「華子様、私のことは何を仰っても構いません。でも、お姉様を侮辱なさることだけはおやめになって下さい。お姉様は、私が無理をお願いして北白川の家に来ていただいたのです。お姉様は私にとって誰よりも大切な方なのです…!」
広間が水を打ったように静まり返った。
ホテル王、白峰侯爵の一人娘で、美人ではあるが姸のある顔立ちをしている。後ろに取り巻きを従えて綾香と梨央を冷ややかに見下ろしている。
白峰侯爵は、娘華子が一目惚れした縣礼也を是非とも婿にと熱望し、縁談を持ち込んだのだが、断られていたのだ。
ゆえに、縣が梨央にプロポーズして以来、北白川家を目の敵にしている。
梨央がめったに行かない過去のお茶会でも顔を合わせると辛辣な言葉を投げかけていた。
梨央がお茶会や夜会嫌いになったのは華子の影響と言っても過言ではなかった。
華子の顔を見た途端、梨央は身を硬くし表情まで凍りついてしまった。
そんな梨央を面白そうに見ながら華子は揶揄う。
「…あら、梨央さん。お久しぶりね。お元気そうで何よりだわ。…ああ、そういえば…貴方、縣男爵様との婚約を取りやめられたそうね?…一体何の不満があって?
縣様はずっと貴方の後見人を務められてお護りしていらしたのに…お気の毒な縣様」
梨央は震えながら俯く。
部屋の隅に控えていた月城が固唾を呑んで見守っていたが、耐えられぬように一歩出たその時、月城の腕を抑える者がいた。
「…縣様!」
遅れて入ってこようとしていた縣であった。
縣は穏やかだが真剣な口調で
「…梨央さんを今、庇うことは得策ではないよ。華子嬢の火に油を注ぐ事になる」
「しかし…!」
「…嫉みや誹謗は社交界では日常茶飯事だ。…これを自分で乗り越えなくては一人前のレディにはなれない…」
「…縣様…!」
月城は唇を噛み、梨央を見つめる。
「…ねえ、もしかして、お隣のお姉様の入れ知恵なのでは?縣様と貴方がご結婚なさったら、お姉様の財産も少なくなってしまいますもの。…梨央さん、貴方、お姉様の口車に乗っておしまいになったのじゃなくて?
お気をつけ遊ばせ。芸者風情の娘なんて最初から財産目当てに決まっているのですからね」
意地悪く高笑いする華子。
…と、梨央は綾香が侮辱されたのを聞いた途端、立ち上がり、今まで誰も聞いたことがないような強い口調で言い返した。
「華子様、私のことは何を仰っても構いません。でも、お姉様を侮辱なさることだけはおやめになって下さい。お姉様は、私が無理をお願いして北白川の家に来ていただいたのです。お姉様は私にとって誰よりも大切な方なのです…!」
広間が水を打ったように静まり返った。

