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真珠浪漫物語
第13章 茶碗の中の嵐
不意に綾香は華子を真剣な眼差しで見つめた。
「私はね、芸は売るけど身体は売らないんだよ。あそこで働く歌手は皆そうさ。真剣に歌で勝負している。…だけど、もし私がどうしても身を売らなきゃならない境遇だったら…娼婦になってでも、這い蹲ってでも生きて行っただろうね」
「…な、なんですって?」
「私には親兄弟の為に遊郭に売られて行った幼なじみもいる。あの子たちは、一人として好きこのんで身体を売ってる訳じゃないんだ。生きる為に、家族を養う為に必死で身体を張って生きているんだよ」
綾香はゆっくり立ち上がり、華子に近づく。
「…あんたみたいに生まれた時からお貴族様で、ひもじい思いもしたことがないような人間に、娼婦を批判する資格なんてないんだよ。覚えときな!」
綾香の凄まじい迫力に華子はたじろぎ、後ずさりした。
綾香の余りに水際立った啖呵に惚れ惚れとした表情をする来賓もいる。
周りの視線は、明らかに心無い中傷をした華子に、非難めいた色を帯びてきていた。
形勢が不利になったことに、敏感に察知した華子のお取り巻きもバツが悪そうに
「…華子様…も、もうよろしいのでは…」
と、席に帰ろうと促す。
しかし、腹の虫がどうにも収まらない華子は
「な、なによ…!芸者風情の妾の子が…!生意気なのよ!」
最後の誹謗を投げつけた。

…と、その時、広間の入り口から1人の凛とした老婦人の声が響いた。
「…あらまあ…芸者風情芸者風情って…着いた途端、私の悪口が聞こえたんだけど…私の耳が遠いせいかしら?」
そして美しい白髪の老婦人がゆっくりと入ってきた。
老婦人は白銀の品の良いアフタヌーンドレスを優雅に着こなし、豪華な宝石を身につけ、杖をついてはいるが、その歩く様はまるで女帝のように威厳と品位に満ちていた。

会場の空気が一変した。
慌て後を追ってきた叶夫人が声を上げる。
「皆様、伊藤閣下夫人、竹子様がご到着になられました!」
一同が音もなく全員起立する。
皆が緊張に包まれた中、ぽかんとする綾香。
梨央を振り返る。
「ねえ、梨央、あのばあさん誰?」
梨央は慌て小声で説明する。
「伊藤閣下夫人です。内閣総理大臣の伊藤閣下の奥様です」
「へ〜、総理大臣のねえ…」
伊藤夫人、竹子はゆっくりと綾香と華子の方に近づいてくる。
華子が見る見る内に今度は蒼ざめて来た。

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