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真珠浪漫物語
第13章 茶碗の中の嵐
コツコツと竹子の杖の音がしんと水を打ったように静まり返る広間に響き渡る。
杖の音は華子の前で止まった。
竹子は胸の隠しからサファイヤで縁取られた片眼鏡を取り出し、つまらぬものを見るように華子を見回し
「…こんな若い乙女が私の出自をご存知とはね…私も有名人になったものだわ」
と皮肉たっぷりに呟く。
華子は百獣の王に睨まれた哀れな鼠のように震え上がり
「…ち、違います…わ、私は…竹子様のことを揶揄したのではありません…こ、こちらの…綾香さんのことです…」
と直立不動のまま蚊の鳴くような声で弁明した。
「あらまあ…芸者風情って聞こえたものだからねえ…ここに私のお仲間がいるなんて、嬉しいこと。…芸者風情…昔はよく言われたものですよ。鹿鳴館でもやんごとない華族の奥様にそう言われて、ドレスの裾を踏まれたりね…もちろんそんなお行儀の良い方には、丁重に踏み返して転ばせてさしあげたけれどね」
竹子は綾香に茶目っ気たっぷりにウィンクする。
綾香は思わず吹き出してしまった。
「ちょっと梨央、このばあさん面白いし、かっこいいねえ!」
無邪気に笑い転げる綾香に梨央は慌て
「…お姉様…閣下夫人ですわ…!」
と困ったようにたしなめる。
「良いのですよ、梨央。あんな啖呵を切った貴方にかっこいいと言われるなんて恐縮ですよ。長く生きていると面白いことに出会うものだわねえ…今時芸者を小馬鹿にする若い躾のなっていない娘とか…ね…」
もう一度片眼鏡で華子を睨めつける。
華子は
「…も、申し訳…ありませんでした…ッ!」
と米搗きバッタのようにお辞儀をすると泡を食ってその場から逃げ出してしまった。
「は、華子様…!お待ちください…!」
慌てて後を追う取り巻きたち。

「…なんだつまらない。もっと根性があるかと思いきや…見かけ倒しだねえ…」
竹子はわざとらしくため息をつき片眼鏡を仕舞う。
そして、綾香を見つめ孫に接するように優しく尋ねた。
「貴方、お母様が芸者だったの?」
綾香はにこにこ笑いながら答えた。
「はい。柳橋の芸者をしていました」
「まあ、偶然!私も昔、柳橋の芸者をしていたのですよ」
綾香は驚く。
「え⁈閣下夫人が⁉︎」
竹子は昔を懐かしむようにしみじみと口を開く。


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