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真珠浪漫物語
第13章 茶碗の中の嵐
竹子はふっと微笑んで綾香を見る。
「貴方のお母様の名前は?」
「…朱音です」
竹子はその彫りの深い目を見開き、遠くの記憶を辿るように思いを馳せた。
「…私が花柳界から引退し、御前と一緒になっても暫く、置屋の子の面倒を見てやっていた時があるのですよ。…少しでも良い旦那が付いて幸せになれるように紹介したりしてね…そういえば…朱音と言う名の綺麗な、歌が上手い下地っ子がいたような…」
綾香は目を輝かせる。
「本当ですか?」
竹子は頷く。
「評判の美少女でね。気立ても良いし、芸にも秀でて、先行きが楽しみだと思っていたら…。辛い恋をしているという風の便りを聞いてから、消息が分からなくなってしまいました…。とても残念に思っていたのよ…。そう…貴方が朱音の…」
竹子はしみじみと綾香を見つめる。
綾香は感激し、やや涙ぐみながらも気丈に
「ありがとうございます。母を覚えていて、褒めてくださって…。冥土で母も喜んでいることでしょう」
と礼を述べる。
そして、しんみりしたこの場の雰囲気を変えるように明るく口を開いた。

「…お礼と言ってはなんですが…歌を歌わせていただこうかと思います」
驚く梨央。
「お、お姉様…?」
綾香はしんとして竹子とのやり取りを聞いていた広間の来賓客達に聞かせるように笑いかけた。
「私は歌手です。ですから…場を白けさせて終わるのが一番苦手なんです。…私のせいでせっかくのお茶会の雰囲気が台無しになってしまい…本当に申し訳ありません。お詫びに歌わせていただいてよろしいでしょうか?
…ご自宅に帰って、今日は浅草オペラの歌手の歌を聴いたよとご家族にお話いただけましたら盛り上がること間違いなしですから!」

温かい笑い声と共に力強い拍手が響いた。
入口で事の成り行きを月城と共にじっと見守っていた縣である。
「ぜひ、聴きたいですね。美貌の伯爵令嬢のお歌なんて滅多に聴けるものじゃない」
綾香は笑い返した。
縣の隣の月城を見ると、真剣な、しかし感動したような熱を帯びた眼差しをしている。
綾香は月城に頷き、広間をぐるりと見渡す。
骨董品のように美しいピアノが一台飾られているのが目に入る。
「叶夫人!ピアノを拝借しても良いですか?」
綾香が叶夫人を目で探し、尋ねる。
「も、もちろん。構いませんわよ。でも…どなたが?」
戸惑う夫人に綾香は答えた。
「…私の大切な妹、梨央が弾きますわ」
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