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真珠浪漫物語
第13章 茶碗の中の嵐

「…こんな表情の梨央さんを拝見できるとはね…。やはり貴方は凄い人だな」
気がつくと縣が隣に来て、梨央を眺めていた。
「縣さん…」
「…梨央さんをずっとお護りしていたつもりだったけれど…とうとうこんな表情は引き出せなかった…」
寂しげに笑う。
「…縣さん、貴方が梨央を大切に護ってくださっていたから、梨央はここまで美しく、純粋に、心優しく育ったのよ?他の人ではおそらく無理だった…」
縣は綾香の優しさに微笑む。
「ありがとう、綾香さん。…しかし貴方の歌は素晴らしいね。ねえ、もっと本格的な舞台で歌ってみる気はないの?」
「…いずれは…。でも今は…」
令嬢達に囲まれ、楽しそうに笑う梨央に目をやる。
「…今は…梨央の側にいてあげたい。…あの子はずっと一人ぼっちだったから…」
「…そう…」
と、再び叶夫人の声が響いた。
「皆さま。伊藤閣下夫人、竹子様がお帰りになられます」
一同が再び起立し、竹子に注目する。
竹子は杖の音を優雅に響かせ、叶夫人に話しかけながら歩き出す。
「…叶さん、本日は面白いものをたくさん見させていただきましたよ。良い時間でした」
「…恐縮でございます」
そして、綾香と梨央の前まで来ると…
「綾香。今日は素晴らしい歌をありがとう。近い内にまた逢いましょう…。色々とお話したいことがあるわ」
と、綾香の手を優しく握った。
「はい。また、お逢いできる日を楽しみにしております」
竹子は隣の梨央を見ると、慈愛に満ちた表情でそっと梨央の頬を撫でた。
「…梨央…良い姉が出来て、良かったわね」
梨央は涙ぐみながら頷く。
「…はい、竹子様…」
「貴方のことはずっと気がかりでした…。でももう大丈夫ね。綾香と力を合わせて、生きてお行きなさい」
「…はい!」
威厳と美しさのある後ろ姿で去って行く竹子を見送りながら
「ねえ、梨央。竹子様とは知り合いなの?」
「…ええ…昔、母が亡くなって私がずっと部屋に閉じ込もっていた時にたまたま父に会いに閣下とご一緒に家にいらしたんです。…竹子様は父から私の話を聴いて、私の部屋に来られて…今はたくさん泣きなさい。泣きたいだけ泣いて…それから、どれだけ時間が経ってもいいから必ず笑うのよ…て。そうでないと亡くなったお母様が天国に行けないから…と慰めて下さったのです」
「…へえ…いいばあさんだね」
梨央は微笑んだ。
「…はい。お優しい方ですわ…」
気がつくと縣が隣に来て、梨央を眺めていた。
「縣さん…」
「…梨央さんをずっとお護りしていたつもりだったけれど…とうとうこんな表情は引き出せなかった…」
寂しげに笑う。
「…縣さん、貴方が梨央を大切に護ってくださっていたから、梨央はここまで美しく、純粋に、心優しく育ったのよ?他の人ではおそらく無理だった…」
縣は綾香の優しさに微笑む。
「ありがとう、綾香さん。…しかし貴方の歌は素晴らしいね。ねえ、もっと本格的な舞台で歌ってみる気はないの?」
「…いずれは…。でも今は…」
令嬢達に囲まれ、楽しそうに笑う梨央に目をやる。
「…今は…梨央の側にいてあげたい。…あの子はずっと一人ぼっちだったから…」
「…そう…」
と、再び叶夫人の声が響いた。
「皆さま。伊藤閣下夫人、竹子様がお帰りになられます」
一同が再び起立し、竹子に注目する。
竹子は杖の音を優雅に響かせ、叶夫人に話しかけながら歩き出す。
「…叶さん、本日は面白いものをたくさん見させていただきましたよ。良い時間でした」
「…恐縮でございます」
そして、綾香と梨央の前まで来ると…
「綾香。今日は素晴らしい歌をありがとう。近い内にまた逢いましょう…。色々とお話したいことがあるわ」
と、綾香の手を優しく握った。
「はい。また、お逢いできる日を楽しみにしております」
竹子は隣の梨央を見ると、慈愛に満ちた表情でそっと梨央の頬を撫でた。
「…梨央…良い姉が出来て、良かったわね」
梨央は涙ぐみながら頷く。
「…はい、竹子様…」
「貴方のことはずっと気がかりでした…。でももう大丈夫ね。綾香と力を合わせて、生きてお行きなさい」
「…はい!」
威厳と美しさのある後ろ姿で去って行く竹子を見送りながら
「ねえ、梨央。竹子様とは知り合いなの?」
「…ええ…昔、母が亡くなって私がずっと部屋に閉じ込もっていた時にたまたま父に会いに閣下とご一緒に家にいらしたんです。…竹子様は父から私の話を聴いて、私の部屋に来られて…今はたくさん泣きなさい。泣きたいだけ泣いて…それから、どれだけ時間が経ってもいいから必ず笑うのよ…て。そうでないと亡くなったお母様が天国に行けないから…と慰めて下さったのです」
「…へえ…いいばあさんだね」
梨央は微笑んだ。
「…はい。お優しい方ですわ…」

