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真珠浪漫物語
第13章 茶碗の中の嵐
「先生、梨央は大丈夫ですか?」
心配で堪らず側を離れなかった綾香が、丹羽医師に詰め寄る。
「…お熱は少々高うございますが、他には異常はございません。おそらくはお疲れが出たのでしょう。梨央様はお出かけに慣れていらっしゃらないので、久々の外出に根を詰められたのでは…」
「…梨央…」
白いネグリジェに着替えさせられ、ベッドで静かに眠る梨央を見つめる。
透けるように白い肌が熱のためにやや上気し、薄桃色に染まっている。
可憐な桜桃のような唇がやや開かれて呼吸を繰り返している。

綾香は、大人しい梨央が昼間自分の為に必死に庇ってくれたこと、引っ込み思案な梨央が大勢の人の前でピアノを弾いてくれたことを思い出し、愛しさで胸が一杯になる。
「…梨央…ごめんね…」
綾香は梨央の手を握りしめる。

丹羽医師はますみが用意した消毒薬で手を洗いながら
「今夜は念の為、うちの看護婦を常駐させておきますが…」
「いえ、先生。梨央は私が看病します」
綾香は梨央を見つめながら言う。
「綾香様?…そのようなことを綾香様にはさせられません」
ますみが押しとどめようとするのを
「…私が看病したいんです。」
と綾香はきっぱり言い切り、梨央の髪を優しく撫でる。

ドアの外でそっと様子を伺っていた月城は、ふっと穏やかに笑い、静かにドアを閉めた。
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