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真珠浪漫物語
第15章 Under The Rose
「綾香!」
千が嬉しそうに柵越しに手を振っている。
「久しぶりだね。千、元気だった?」
綾香は小走りで近づき、笑いかける。
「うん!元気だよ。綾香は元気?」
「元気よ」
千は、あうんの呼吸で、柵から煙草を差し出し火をつける。
綾香は美味しそうに一服する。
「…なんか…綾香はもうどこから見ても貴族のお嬢様だね…もう、浪漫には戻ってこないんだよね…?」
千が寂しげに尋ねる。
「そんなことないよ!…ただ…今、ちょっと色々あってさ…お嬢様達に慈善事業で歌を歌ってくれ、て頼まれたり、お茶会や夜会に招待されたりと、ここを離れられないんだよね」
…と、綾香は千に先日のお茶会の一件を簡単に話す。

千は目を輝かせた。
「すごいじゃん!綾香!そんな凄い人達の前で歌ったの⁉︎」
綾香は笑う。
「まあね…でも私にとってはお貴族様のお屋敷で歌うのも、浪漫で歌うのも同じだよ。舞台はどこだっていいの。歌が歌えたらね」
「さすが綾香!」
千は頼もしそうに綾香を見る。
「ねえ、浪漫のみんなは元気?」
千の顔が曇り出す。
「…それがさ…看板歌手の綾香がいなくなってから客足がどんどん遠のいてさ…店はすっかり閑古鳥が鳴いてるんだ」
「…え?」
綾香は眉を顰める。
「…綾香の歌が聴けないなら来ても仕方ないって、お客に言われたよ…」
「そんな…」
千はため息を吐く。
「オーナーも、このままなら店を畳まなきゃならないかも…て頭を抱えてる…」
綾香は何かを考えこむように押し黙った。
千は慌てて、空気を変えるように明るく笑う。
「な、なんて言ってるけどさ!大丈夫だよ!あの店は何回も倒産の危機を乗り越えてるんだからさ!」
「…千…」
「だから綾香は心配しないで!…綾香は北白川伯爵家のお嬢様なんだからさ…やっぱり相応しい生き方をしなくちゃね…」
と、少し寂しく笑う。
そして、手にした風呂敷包みを綾香に渡す。
「これ、梨央様に。母さんが作ったおでんだよ。母さんが、あのお姫様があんなに喜んでくれたから持っていきな、てさ」
「まつさんが?…ありがとう…」
綾香は嬉しそうに風呂敷包みを受け取る。
代わりに千は綾香から煙草を受け取り、
「じゃあ、俺はもう行くね。綾香、元気でね。梨央様によろしく」
「ありがとう、千。まつさんによろしく伝えてね」
千は元気に頷くと手を振り、あっと言う間に木立の中に消えていった。
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